看護研究で文献レビューをする必要があるけど、実際にどう進めたらいいかわからない…
看護研究をする時、先行研究のレビューをする必要がありますよね。
一見簡単そうに見えるかもしれませんが、膨大な先行研究の中からどのように検索をするのか、何を引用するのかは、結構難しいのではないかと思います。
私は現在大学院で、研究計画書の作成や、学会発表の際に文献レビューをしています。
学部の時にも、勤務先の病院での事例研究の時にもざーっと文献レビューをしましたが、大学院に入ると「文献レビューは奥が深くて、もっと色々知識が必要なんだ!」ということに気がつきました。
この記事では、看護研究においてできる限り系統的に文献レビューをするための、「データベースを使った文献検索の方法」について、私の経験を踏まえてお話していきたいと思います。
看護研究をする看護学生さん、そして病院の看護師さんのお役に立てたら幸いです。
研究テーマのキーワードを考える
文献レビューをしようとする人は、ある程度「研究のテーマ」が決まっていると思います。
その場合は、「研究テーマ」の、キーワードは何か?を考えてみましょう。
これが、データベースで検索をするキーワードになります。
例えば、「せん妄患者への生活リズム是正の効果」について、研究をしてみようと思っているとします。
この場合、キーワードとして思いつくのは「せん妄」「生活リズム」「昼夜逆転」「手術後」「高齢者」…などでしょうか。
ここで注意点があります。
いくつかのキーワードを出して、とりあえず検索をかけるというのも間違いではないのですが、手当たり次第に検索を始めると、膨大な文献が検索され、時間がいくらあっても足りません。
なので、キーワードを出した時点で、自分の関心がどこにあるのかをある程度明確にして、レビューの対象にするかどうかという基準を作る必要があります。
例えば、先ほどの「せん妄患者への生活リズム是正の効果」というテーマのキーワードでは、以下のような基準を考えることが可能です。
- 高齢者を対象にするのか?高齢者以外の成人患者を対象にするのか?
- 入院後のせん妄?手術後のせん妄?
- 日本国内?海外も含める?
このように、自分の中での基準を考えておくと、例えば「日本国内における、手術後の高齢患者のせん妄」に関する文献に焦点をあてて検索をすることが可能になります。
こういった基準をつくることで、①計画書や論文の中で、文献レビューで検討したいことについて適切に情報を記載できる、②自分が行った文献レビューの限界を明確に述べることができるというメリットがあります。
自分で設定した基準は、どこかにメモをとっておいて、いつでも見直せるようにしておきましょう!
データベースで検索をする
キーワードがある程度決まったら、実際にデータベースでの検索をしてみましょう。
私は、日本国内の文献は「医中誌Web」、海外の文献は「PubMed」を使用して検索を行っています。
医中誌Webは、所属している大学や病院が契約をしていないと使用するのは難しいのですが、日本看護協会に入会している場合は「最新看護索引Web」や、「Google scalar」を使用して文献を検索をことができます。
そして、文献検索には、キーワード検索と主題検索という2つの方法があります。
私は主題検索というものを大学院に入ってから知ったのですが、この2通りの考え方を知っておくと、系統的な文献検索をするのに役立ちます。
①キーワード検索
キーワード検索は、日常的に「ググる」のと同じで、適当に思いつくキーワードを掛け合わせて検索する方法です。
例えば、「せん妄 看護」と検索するような感じです。
キーワード検索では、and検索やnot検索を行って結果の絞り込みを行うことも可能です。
ただ、最初から複雑な検索式で検索をすると、重要な文献を見落とす可能性もあるので、徐々に絞り込みを行なっていくのがおすすめです。
PubMedで、海外の文献を検索する際も同じように、検索窓にキーワードを入れていくことで検索が可能です。
②主題検索(シソーラス検索、MeSH検索)
次は、あまり馴染みのない主題検索についてです。
医中誌Webでは、ある概念を表す言葉が複数存在する時に、それらの言葉を一つに集約するために選定された、統制語というものを各文献に付与しています。
簡単に言えば、「専門家が、その文献に適切な言葉を与えて、検索がしやすいようにしてる」っていう感じです。
統制語は、医中誌Webであればシソーラス用語と医中誌フリーキーワードの2つに分類されます。
このうちシソーラス用語は、カテゴリーに分類され、下位概念から高位概念まで、断層化されて登録されています。
例えば、「糖尿病」「合併症」というキーワードで検索を行うと、「1型糖尿病」「2型糖尿病」「妊娠性糖尿病」…などが含まれたり含まれなかったりします。
いくつものキーワードで検索をするよりも、糖尿病性の合併症がどのようなシソーラス用語なのか調べると、その用語が統制語として付与された文献を検索することができ、より網羅的に検索ができます。
上は、「糖尿病」に関するシソーラス用語を階層表示したものです。
「糖尿病性合併症[C19-90-60+1]」というシソーラス用語を用いて検索をすると、その下位概念を統制語にしている文献も検索が可能になります。
ちなみに、PubMedだとシソーラス用語にあたる、MeSH用語を使って同じように主題検索を行うことがきます。
検索をする際は、キーワード検索や主題検索を用いて、だいたい200件以内くらいを目安に絞り込めると、一通り把握することが可能だと思います!
検索された文献を実際に入手する
文献を検索したら、実際に文献を入手します。
全ての文献を読むのは難しいので、取捨選択をして文献を入手していきます。
文献入手の手順は、以下の通りです。
- データベースで検索された結果から、ざっとタイトル(title)と要旨(abstract)を見ていく。
- 気になった文献にチェックをつける。
- 一通り見終えたら、チェックをつけた文献が入手可能かどうか確認する。
- PDFをダウンロードもしくは印刷して文献を入手する。
検索結果が200件以内くらいに絞り込めれば、①〜④の手順で入手することが可能かと思います。
検索結果が1000件とか2000件の場合、全てを見るのは難しいと思うので、出版年・研究方法・文献の種類(会議録、原著論文など)で絞り込んでいくと良いと思います。
ここでの注意点は、全ての段階で、検索結果、気になった文献の件数、入手可能だった件数などを記録をしておくことです。
例えば、以下のような感じです。
検索日:○月○日
使用データベース:医中誌Web
検索ワード:せん妄(シソーラス用語)and 看護 and 高齢者
該当件数:250件
気になった文献:30件
入手可能だった文献:25件
除外基準:〜〜〜
包含基準:〜〜〜
このように記録をしておくと、時間が経ってからもう一度検索をしたい時や、計画書や論文を書く時に二度手間になりません。
まとめ:少しでも系統的な文献検索をしてみよう
以上、この記事ではデータベースを使った文献の検索方法についてお話しました。
文献検討をする時、なんとなくキーワード検索をして、いくつかの文献をついばむようにしていませんでしたか?
実際、私は学部性の時の学位論文や、病院での事例研究を書く際にはキーワード検索しかしていませんでした。
系統的な文献検索は手間がかかりますが、研究テーマに関する知識を広げるためにもやっておいて損はないと思います。
少しでもいいので、今回ご紹介した方法を使って文献レビューをしてみていただけると嬉しいです。
大学院受験の研究計画書の作成についても、記事があるので参考にしてみてくださいね。
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